新年のごあいさつ(機関誌168号より転載)

特定非営利活動法人大阪府中途失聴・難聴者協会 理事長 上野哲人

新年おめでとうございます。会員の皆さま、支援してくださる皆様には、いつもお世話になります。日ごろのご支援を心より感謝申し上げます。今年も皆様にとって幸多い年になりますよう、祈念いたします。

今や超高齢化社会に突入し、高齢難聴者も増えてきました。私たちが目指す、中途失聴・難聴者が自由に社会参加できる社会にするには、一般社会への啓発が不足していると思います。不便さを伝える機会が少ないことと共に、私たちの働きかけも足りません。

11月の「ともいき」‥共に生きる障がい者展‥で、中途失聴・難聴者の啓発の場をいただきました。20分のプレゼンテーションと、二日間にわたるブース出展を行いました。ブースでは難聴相談、難聴体験を行いました。難聴とは何か、難聴者は何に困っているのか、要約筆記とは何か、等を知ってもらえたと思います。

つい何年か前までは、中途失聴・難聴者は外出先からの連絡が難しく、音声拡大付きの公衆電話や公衆FAXを探したものです。最近では携帯電話やスマホの普及のおかげでメールやパソコンメールが使えるようになってきました。コミュニケーション障害者である中途失聴・難聴者は、不幸だという人がいました。コミュニケーションの面での不便さはありますが、中途失聴・難聴者だから不幸とは言えません。幸せも不幸も絶えず揺れ動くものではないでしょうか。国際障害者権利条約に合理的配慮という言葉が出てきます。権利条約を国が批准したことから、障害者差別解消法が生まれ、平成28年4月から施行されています。合理的配慮は、求める側と提供する側ではかなりの温度差があるようです。昔の話ですが、ある皇族の方が講演で、障害は個性と考えてみませんかと言われました。その時は少し違うような気がしましたが、何年か経つうちに、障害を受容して社会参加するには、まさに至言ではないかと思えるようになりました。

公共施設、交通機関等の放送に磁気誘導ループが併設されれば、難聴者には嬉しいことです。やがて来る緊急災害時に、音声情報と共に文字情報でも伝えてほしいと強く求めたいものです。ヘルプを願う時、例えば緑のハンカチを振ると、道行く人が近寄ってくれる。そして耳マークを見せると、筆談で応答してもらえる。そんな社会にできないものか。盲の方や、肢体不自由の方々には、私たちにできる支援もしたいものです。

今年も皆様とともに中途失聴・難聴者の理解と対応を求めたいと思います。よろしくお願いします。